2008.11.27 第2回 目隠しテストとブランド力

都市生活学部教授 伊藤 裕一
最近は、「私、バッグ、欲しいわ」というより、「今、ルイ・ヴィトンにするか、コーチにするか迷ってるのよね」などと、いう人の方が多いだろう。もちろん、「バッグ」と言えば、商品の分類(ジャンル)についての話であるし、「ヴィトンかコーチ」と言えば、それは、ブランドの話をしていることになる。また、あるブランドが、全く新しい商品ジャンルを創りあげ、長期間、ナンバー1ブランドとして生き続けていると、いつの間にか、そのブランド名が商品ジャンルそのものになってしまう場合もある。ちょっとした切り傷を負った時、「おかあさ?ん、バンドエイド持ってきて!」と言うだろうが、いちいち、「救急絆創膏持ってきて?!」とは言わないだろう。
こうして、強いブランドが育つと、それを超えるようなブランドを育てる事は、なかなか難しい。そこで、ブランドの力ではなく、商品そのものの力で勝負を挑む、ということになる。競争相手に対して、食べ物であれば、「とにかく、旨い!」、PCなら「とにかく、速い!」とかである。特に、2番手が、1番手の座を奪ってやろうと思えば、どうにかして、1番ブランドを遥かに上回るような商品をつくろうと懸命になる。そこで、例えば、ソフトドリンクであれば、色々な味を開発した後、ブランドやパッケージ等の影響を無くして、商品の力のみで、自分の会社の新商品と、競争相手(1番手)の商品を比較する方法が必要になる。それが、「目隠しテスト(ブラインド・テスト)」と呼ばれる調査の方法である。
例えば、新しい味付けをしたコーラを競争相手と比較したければ、真っ白のコップに、「Q」と「M」というアルファベットだけをつけて、2つのコーラを飲んだ後、「QとM(或いは、MとQ)、どちらの味が好きですか?」というような聞き方をすれば良いわけである。それでは、その結果をどう利用するか? 例えば、あるコンビニで売れてるコーラ10本を見ると、6本が1番手のブランド、3本が自分の会社のブランド、1本は、その他のブランドであるとする。ところが、自社が新しく開発した味付けのコーラを、先ほどの目隠しテストで調べたら、半数以上の人が、自社の会社のコーラの方が好きだと言ってくれるようであれば、現在の商品に代えて、その商品を出せば、スーパーでの実際の売れ方が大きく変化して、目隠しテスト結果と同じように、「競争相手と五分五分の戦いができるのではないだろうか?」と考えるのである。では一体、商品の力だけで、このように大きく競争相手を脅かすことができるだろうか?
ここに興味深い実験結果がある。ド・シェルトニーとノックス(1990)という人が英国で行った「ダイエット・コーク(コカ・コーラ)」と「ダイエット・ペプシ」の目隠しテストである。結果は、44%と51%、ダイエット・ペプシを好む人の方が若干多いように見える。ところが、今度は、商品にブランド名をつけて、その好みを聞いてみると、「ダイエット・コーク」を好んだ人が65%、「ダイエット・ペプシ」を好んだ人が23%という結果であった。目隠しテストの結果は見事ひっくり返されてしまった。コーラのような清涼飲料水では、特に、ブランドの影響がでやすいとは言え、改めて、ブランドの力を見せ付けられる思いである。
「都市」や「まち」或いは「国」にもこうしたブランド力があるのだろうか?
都市生活学部では、このようなこともテーマとして取上げていきたい。
*Leslie de Chernatony and Simon Knox, "How an Appreciation of Consumer Behavior Can Help in Product Testing", Journal of Market Research Society, 32 (1990)
伊藤 裕一教授 略歴
慶応義塾大学社会学修士、カリフォルニア州立大学フラトン校MBA。
ジョンソン&ジョンソンKKプロダクト・マネジャー、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)日本支社マーケティング部長、スウォッチ・ジャパン事業部長、CIC・ビクタービデオ(株)代表取締役社長等を歴任。この間、ベビーローションのブランド・マーケティング、BAのブランド開発、スウォッチ日本初の直営店オープン等に関わる。経済産業省登録中小企業診断士。
著書:「ブランドマネジメント能力」(日本能率協会マネジメントセンター)、「マーケティング監査ハンドブック」(日本能率協会マネジメントセンター)。



























