2008.08.10 第1回 ディズニーシーの正しい見方

都市生活学部教授 小松 史郎
東京ディズニーランドは今年で開園25周年を迎える。第2パークとして2001年9月オープンした東京ディズニーシーも今年で7周年。2007年以降両パーク合わせた東京リゾート全体で年間2500万人前後の驚異的な集客力を誇っている。25周年の今年は1-6月まで半年で過去最高の入園客となっており、今年10月にオープンするシルク・ドゥ・ソレ?ユ・シアターの開業効果を見込むと2600万人の大台を突破するのは確実であろう。
ディズニーシーを見た人の評価は「ディズニーランドより面白くない」派と「ディズニーランドより面白い」派に真っ二つに分かれている。前者はディズニーランドのヘビーファンとスリルライドファンに多く見られる傾向である。割合としては多分前者の方が高いのではなかろうか。後者はディズニーランドのライトファンとディズニーランドはもう飽きたという人やあまり好きではないという人達である。
「面白くない」派の人達が指摘するポイントは2つあって、1つはミッキーやミニーにあまり出逢えないこと、プーさんがいないことである。2つめは、スリル系アトラクションが物足りないことである。センター・オブ・ジ・アースやインディ・ジョーンズ・アドベンチャー、レイジングスピリッツはディズニーランドの3マウンテン(スペース・マウンテン、ビッグサンダー・マウンテン、スプラッシュ・マウンテン)より迫力が無くて面白くないというものである。2006年オープンしたタワー・オブ・テラーがディズニーシーのこの弱点を大きくリカバリーしたが、もともとディズニーが単なる怖いだけのアトラクションは作っていないため、本当のスリルライド好きにはディズニーランドもディズニーシーも物足りないのは当然である。
これに対して「面白い」派の人達が指摘するポイントも2つある。1つは「ライブショーが面白い」という指摘である。本場ニューヨークのジャズとダンス楽しめるビッグバンドビートやマーメイドラグーンシアター、ミスティック・リズムは確かにディズニーランドにはないクオリティーの高いショーである。もう1つは、火山、海、街並みから構成された美しい景観である。「歩いているだけで楽しい」という空間演出は本場アメリカにもない世界一の出来である。特にメディテレーニアンハーバーの街並みやインディ・ジョーンズ・アドベンチャーの景観やエージング技術は素晴らしいが、パステルカラーを使ったメルヘン好みのディズニーランドの熱狂的ファンには評判が良くない。そんな人にはメルヘンチック名な景観をもつマーメイドラグーンやアラビアンコーストが隣り合って作られている所もまたさすがである。
ディズニーシーはディズニーランドのライバルパーク
このようにディズニーランドに比べてディズニーシーの評価が分かれていることこそディズニーシーの狙い所である。ディズニーシーは、第1パークであるディズニーランドの集客容量の限界とゲストの固定化という課題を解消するために第2パークとして計画してきたものである。比較的早い時期から第1パークのディズニーランドとは違う新しい方向のテーマパークを目指そうとしていた。第2パークを第1パークの延長ではなくライバルとすることでゲストの固定化の課題を解決すると共に、隣接するディズニーランドとの相乗効果を狙っているのである。このため、ディズニーランドへの思い入れによってディズニーシーの評価は別れて当然なのである。 ディズニーシーがディズニーランドとの差別化する際に重視したポイントは大きく3つある。
1つは滞在型アーバンリゾートへのこだわりである。OLCは舞浜の施設全体を東京ディズニーリゾートと改名すると共に、宿泊客を現在の3割から5割へ増やそうとしている。宿泊客が5割になることは日帰り圏である首都圏からも泊りがけで遊びに来るアーバンリゾート客を大幅に増やす計画である。これは日本人のレジャースタイルの変革と新しい市場の創造を意味する。ディズニーシーはこの宿泊客にいかにゆったり楽しんでもらえるかに腐心している。火山や湾などゲストゾーンを少なくしてまで景観に莫大な投資をしているのはこのためである。今年7月にオープンした約700室を要するディズニーホテルはこの仕上げのプロジェクトである。
2つめは、メインターゲットを若者から中高年まで拡げようとしていることである。今後少子高齢化が進むなかでテーマパークとして当然考えるべき方向であり、子供を育てあげた夫婦をリピートさせる戦略としても重要であるがその具体像は必ずしも明確でなかった。世界的観光都市をモデルにしながら実は実在しない街並みとお酒が飲める本格的なレストランを配したディズニーシーは大人のテーマパークの先駆的モデルなのである。
3つめは、アトラクションからライブショーへのシフトである。このシフトは20世紀のテーマパークがライドやオーディオアニマトロニクスと呼んでいる高度な科学技術によって人を感動させてきたのに対して、21世紀は人でなければ出来ないより深い感動を提供する方向への転換の実験的パークなのである。今年10月にオープンするシルク・ドゥ・ソレ?ユ・シアターはディズニーリゾートとしてライブショーのレベルの高さを決定的にする筈である。これは中高年戦略であると同時にアーバンリゾート戦略としても意味を持つ。
いずれにしてもディズニーシーもまたディズニーランドと同じく永遠に完成することのないパークである。その行方に思いをはせつつ、夫婦で(恋人のほうがもっとよいが)ホテルミラコスタに泊り、ビッグバンドビートとシルク・ドゥ・ソレーユだけを見て、マゼランあたりで上等のワインを飲みながらフランス料理を食べた後、翌日の朝にホテルのレストランでコーヒーを飲みながら、朝一番に人気アトラクションをめがけて走っていく人々を、「違うんだよなあ」と思いつつ眺めることが正しいディズニーシーの楽しみ方なのである。
小松 史郎教授 略歴
上智大学大学院修士課程経済学専攻修了。
三菱総合研究所集客文化研究部長を経て現職。東京ディズニーランドをはじめとするテーマパークや、愛知万博、つくば博、大阪花博をはじめとする博覧会、国立新美術館、東京都美術館等のミュージアム、酒田夢の倶楽などの観光文化施設、平戸や石巻など各地の街づくりプロジェクトを担当。
専門は、集客都市論、観光計画、集客事業計画、地域・まちづくり計画。



























