

東京・世田谷区、本学の近傍に区営の深沢環境共生住宅があります。竣工してすでに丸10年。いまだに見学者が絶えません。大きな木々の間を入ると、表通りのバス通りとうってかわって緑豊かな中庭が開け、四季折々のお花とともに、小鳥のさえずりが聞こえてきます。

- 深沢環境共生住宅のビオトープ
ここは、戦後間もなく建てられた築40年の木造平屋都営住宅が世田谷区に移管され、1997年に建て替えられたものです。新旧合計70世帯が住み、3~5 階、計5棟の集合住宅と集会室・談話室などの共用施設、そして地域のお年よりのための区立のデイホームが併設されている複合施設です。
国の施策として1990年に始まった「環境共生住宅」のモデルプロジェクトとして、世田谷区と私たちが企画・計画・設計・建設しました。これは単なる「省エネ住宅」ではなく、地球環境、地域環境、居住環境の様々な規模の環境に配慮し、総合的にその「生活の質」を高め、同時に「環境への負荷」を減らすことを目的とした住宅(群)のことです。私たちはこの施策の研究・開発に当初から中心的に関わり、戸建、集合を問わず様々なプロジェクトを企画・設計をするだけ ではなく、理念や方法論をまとめて多くの論文や著作として公開してきました。その業績に対し、2003年日本建築学会賞を頂きました。
環境共生住宅には、3つの大きな目的があります。
1)省エネルギーや資源を大事にし、地球規模の環境に配慮します。立地環境を徹底的に調査して課題を発見し、その結果を企画・設計に反映します。その際、建物の外側の環境から整えていくことが基本です。
2)周辺や地域環境との調和・親和を図ります。周辺のまちや環境との関係を大切にし、視覚的な景観だけでなく、人の生活空間として地域の生態系やコミュニティにどのような影響を与えるかを考えます。
3)居住環境の健康・快適性を多角的に実現します。安全・安心、健康、快適、デザインの美しさなど、居住環境の「生活の質」に直接関わるテーマです。シックハウスやバリアフリーも社会問題化する以前から取り組んできました。
深沢では、この3つのテーマに加えて、住民の思い出を大切にし、生活史の記憶を新しい環境に生かす取り組みに時間を割きました。その結果、多くの樹木、井戸、肥沃な土、既存住宅の木材、瓦等が新しい居住環境のなかに埋め込まれました。そして、住民参加で建て替えの計画づくりが進められたことも大きな特徴です。私たちは、住民の方々はもとより、国、都、区などの当事者同士がお互いの納得がいくまで話し合い、計画・設計を進めました。その結果、戻り入居の住民を中心に「自分たちで建てた団地」という誇りが高く、自治会を中心に、団地の育成管理に積極的に取り組んでいます。今後の課題は入居後の状況を継続的に検証・改善していくことです。
深沢でのこれらの一連の取り組みは広く国内外で注目され、国連が関与する「World Habitat Awards(世界ハビタット賞)2001年」を始め、様々な表彰を受けました。
早稲田大学大学院理工学研究科建築工学専攻修士課程修了。工学修士。
フランス政府外務省給費研修生(技術交流)として渡仏。在パリ「GeorgesCandilis事務所」を経てドイツ、ダルムシュ タットに「建築都市設計同人AG5」設立。帰国し、東京に「岩村アトリエ」設立後、武蔵工業大学環境情報学部・同大学院教授等を歴任。現在、岩村アトリエ代表取締役、早稲田大学大学院、東京工業大学等の講師を兼任するとともに、日本建築家協会副会長、日本建築学会理事等を経て、国際建築家連合(UIA)副会長。
作品:自邸-カッセル・エコロジ-団地(ドイツ、カッセル市)、ファンハウス札幌スタジオ(札幌市)、世田谷区深沢環境共生住宅(世田谷区)、屋久島環境共生住宅(鹿児島県)、うつくしま未来博・21世紀建設館(福島県)など 。
著書:「建築環境論」(鹿島出版会)、「環境共生住宅A-Z」(ビオシティ)、「地球環境建築のすすめ」(日本建築学会)、「地球環境時代のまちづくり」(丸善)、「サステイナブル建築最前線」(ビオシティ)など。

- 世界の住まい、環境共生のまちづくり、住まいのデザイン、都市の居住環境













































