都市の成熟化:
スマートエイジング・シティ形成のために

インフラプロジェクトにおける官民連携(PFI/PPP)をリードする

宮本 和明

地球規模での人口増加の一方で、現在わが国は少子・高齢化に伴う人口減少の世界的なトップランナーです。戦後の高度経済成長下での人口増加により拡大した都市を再編するとともに、少子・高齢化した人口構造のもとで都市活動をより高度に活性化することはわが国の喫緊の課題です。この課題は、先進国はもとより都市化が現在進行中の開発途上の国にとっても遅かれ早かれ将来間違いなく直面することから、わが国がリードすべき国際的な最重要課題の一つとも言えます。

そこで、宮本研究室の教育研究のミッションは少子・高齢、人口減少下の都市圏において、住民の「生活の質(Quality of Life)」の向上に寄与するテーマに取り組み、わが国のみならず世界諸都市の活力ある成熟化に貢献することと位置づけています。
人の高齢化と同じく都市も高齢化(エイジング:ageing)しています。都市の高齢化は住宅やインフラの老朽化だけではなく、社会制度や家族制度のほか生活様式にも及びます。高齢化を危機として否定的に捉えるアンチエイジングではなく、好機として肯定的に捉え、積極的に都市の成熟度を高める視点を都市のスマートエイジングと呼んでいます。宮本研究室ではその基本分析のための都市の将来予測と共に、都市の基盤を支えるインフラマネジメントの効率化を主要テーマとしています。

(1)都市シミュレーションモデルの構築
土地利用・交通・環境に着目し、理論および実証の両面から都市モデルの開発を進めてきています。これは都市の将来予測と政策の効果をシミュレーションするためのものです。既に開発したモデルは国際学会で引用されています。現在は、個々の世帯や企業の将来変化を予測するマイクロシミュレーションと呼ばれる最先端のモデルを開発しています。また、新しい空間統計分析手法も開発しています。

(2)生活の質が高く持続可能な都市づくりのための計画論
スマートエイジングのための都市の持続可能性について検討しています。特に、環境や財政等の視点から、それぞれの都市の発展段階にあわせた都市づくりのあり方を求めています。都市の評価においては人々の生活の質が重要な視点となります。詳細な世帯属性にもとづいてそれぞれの生活の質を高める方法を検討しています。

(3)社会資本整備の新しい事業方式
民間の資金とノウハウを活用した新しい公共事業方式であるPFI(Private Finance Initiative)/PPP(Public Private Partnership)に関して様々な視点からの検討を行っています。その際不可欠なリスク分析とリスクマネジメントについても研究しています。内閣府PFI推進委員会の委員長代理と土木学会インフラPFI/PPP研究小委員会委員長として、実務および研究をリードしています。

略歴

東京大学工学博士。 東京大学工学部助教授、Asian Institute of Technology准教授、横浜国立大学助教授、東北大学大学院工学研究科教授、同東北アジア研究センター教授、武蔵工業大学環境情報学部教授等を経て現職。東京都市大学総合研究所副所長、工学研究科兼任。
世界交通学会(WCTRS)理事・学術委員、開発途上国の交通会議(CODATU)学術委員、都市計画および管理のためのコンピューター利用国際会議(CUPUM)理事、アジア交通学会(EASTS)元国際学術委員長、土木学会インフラPFI/PPP研究小委員会委員長等。
内閣府民間資金等活用事業(PFI)推進委員会委員長代理、国土交通省、地方公共団体等の都市計画、交通計画、PFI/PPP関連の各種委員会等の委員長等。

著書:「都市交通と環境(編著)」(運輸政策研究機構)、「Urban Transport and The Environment (sharing parts and editing a chapter)」、「日本版PFI(共著)」(山海堂)他。

論文:Transportation Research Record等の国際学会論文誌を中心に多数。

担当科目

都市と交通、都市のインフラほか