思い描く都市開発・投資を
進めていくための企画・運営

都市開発・投資とその企画・運営のプロフェッショナル

太田 明

日本の都市開発・投資は20世紀の高度経済成長時には、都市の発展に大きく寄与してきました。しかしながら、21世紀に入り、開発用地も限られ、都市は大きな経済成長が見込めない中、高齢化・人口減少等の問題もあり、都市開発の多様化が進んでいます。デベロッパー各社は、現在、国内では、従来の住宅・商業・オフィス・ホテルの開発から、物流倉庫・データセンター・シニア事業・エネルギー事業(太陽光・風力発電等)、等の幅広い種類の開発を進めている一方、都心部では建替えを含めた再開発事業に注力しています。デベロッパーは、時代に合わせて社会のニーズを発掘し、ビジネスを拡大していくための企画を考えることが重要になっています。

シンガポールの都市開発
(ラッフルズプレイスの金融街)

社会のニーズとして、昨今のキーワードとして挙げられるのは、人口増加や経済成長をしている海外での都市開発です。特に、今後も引き続き成長が見込めるアジアでの都市開発はこれからますます重要になると考えられます。私は、2018年にシンガポールに行き、デベロッパー 東急不動産の東南アジア拠点の設立を牽引し、4年間、アジアでの都市開発・投資を推進してきました。アジアでの都市開発は、その経済成長に乗れるという利点はあるものの、通貨、宗教、民族、商習慣、文化・歴史など、様々な点で日本とは異なるため、日本とは異なるリスクを負ってしまいます。そのため、我々が思い描くような都市開発を海外で推進するためには、現地のことをよく知る現地のデベロッパーとパートナーシップを組み、一緒になって開発を行うことが必要となります。しかしながら、我々が日本で考える常識は海外とは異なり、開発の企画などに関して、現地のデベロッパーと合意するのは簡単ではありません。例えば、私が担当していたアジアの高層マンションの開発プロジェクトでは、ビジネスとしてお互いが求めるリスクやリターン(利益)が異なり、ビジネスプランの議論には、多くの時間を要しました。ビジネスプランは、世界でフォーマットは異なっていても、都市開発の基礎として全てのデベロッパーが大事にしているものだと思いました。

インドの都市開発
(グルガオンのサイバーハブ)

都市開発は、思い描くような理想だけではできず、社会のニーズ、そして、ビジネスとしての側面があって成り立ちます。ビジネスの側面としては、お金を出す人がいて、出したお金にはリスクがあり、相応のリターン(利益)が求められる投資としての要素も大きく、私は都市開発と投資の概念はセットで考える必要があると思っています。デベロッパーの行う都市開発は、社会のニーズを満たす魅力的な開発であり、かつ、その開発によってビジネスとして利益を上げることが求められます。つまり、都市開発・投資には理想と現実(ビジネス)の両方を満たすことが重要だと考えています。私は、そのような企画を考え、運営を推進できるよう、日々、都市開発のプロジェクトと向き合っています。

略歴

名古屋工業大学大学院工学研究科創成シミュレーション工学専攻博士課程修了。博士(工学)
東急不動産株式会社に入社後、都市開発・投資、ファンド・REITビジネスに14年間、携わってきた。東急不動産をスポンサーとするコンフォリア・レジデンシャルREITの上場や、シンガポールにおける東南アジア地域拠点としてのTokyu Land Asia社の設立を牽引し、シンガポールに約4年間の駐在、アジアでの様々な都市開発プロジェクトに関与してきた。現在は、東急不動産のアドバイザーも務めている。これらの実務経験を活かし、都市解析手法を用いた不動産賃料の要因分析やJ-REITの研究等を行っている。

論文:太田明,高橋大志,兼田敏之「スペース・シンタックス指標を用いた賃料要因分析に関する研究-渋谷駅周辺を対象とした建物用途別分析による比較-」(日本不動産学会誌),第31巻第4号,pp. 109-118
太田明,高橋大志「公募増資時のJ-REIT投資口価格に分配金変動が与える影響に関する分析」(証券アナリストジャーナル2018年9月),pp. 56-65

担当科目

プロジェクトマネジメントほか